目標達成のツール① ‐書く理由‐ (全9回)

 

 

私は自己管理マニアです。
自律性、効率性マニアと言ってもいいかもしれません。

全ての人にとって平等な通貨といわれている「時間」の管理はもちろん、その時間当たりの効率を上げるための体調管理(主に睡眠、食事、運動の管理)もしています。

こう聞くと超ストイックで目標達成にがむしゃらな真面目人間のように思われますが、実際はそうでもありません。
おいおい伝えますが、根本は堕落人間です。テレビもマンガもお菓子も油ものもゴロ寝もチョー大好きです。

そんな私がどのようなツールを使って規律を持った生活を送れるようになったのか。
そのツールに興味がある方には申し訳ないのですが、今回はそれそのものを紹介する記事ではありません。
その理由は私がケチだからでも恥ずかしいからでもありません。

まず理由の一つに、この手のサイトを閲読していただいている方の多くはいわゆる「意識高い系」、つまり向上心と好奇心が旺盛な成長体質の方々であろうということが想像でき、その類の方というのは計画表から日誌、チェックシート、メモ帳まで様々な「書くこと」の効果を理解したうえで既に自身のツールを使っているか、あえて使っていないかのどちらかだと推測できるから、というものがあります。

二点目に結果(ツールそのもの)よりも原理原則(ツールを作成させるにあたり重要になったポイント)の方を理解しておかないと、ツールを使って「書く/記録する」ことが目標達成のために役立たないから、という考えがあります。

これはサッカーの戦術理解に対する捉え方とも似ています。
これだけ簡単に情報が手に入る社会になった今、プレーのパターンや定義(数学における公式みたいなもの)などの知識も簡単に入手できるようになりました。
それこそ指導者のみならずサポーターにとってもです。

それ自体は大変喜ばしいことですが、その背景にある、あるいはその根っこにある原則(数学で言えば公式が出来上がるに至った経緯)を理解しておかないと、例えば間違った試合解説(これは地上波、有料チャンネル問わず、残念ながら非常にたくさんあります)を鵜呑みにしてしまい、指導や分析に良くない影響が出てしまいます。

というわけで、ここでは結果に至る要点を伝えていくので「このツールをこのように使え」という体系化がされているわけでもない当記事は、結果が先に欲しい人にとっては読むだけ時間の無駄になります。
反対に自分用のオリジナルのツールを作りたい人にとっては役に立つかもしれません。

これは後に述べる「自由と不自由どちらが楽か」という話にもつながる考えです。

それとこの記事を読んで、読んだあなた自身の新しい発見や頭の整理に役立つものがあればもちろん嬉しいことですが、今回は特に指導者が選手に「書く/記録する」ことの意義を伝え、その実践と継続を叶えるためにはどうしたらいいかという観点で説明をしていきます。
指導者や教育者でなくても、教育対象の部下を持つ会社員の方や、何も仕事のシーンでなくてもアドバイスを与えたい友人がいる人にとっては役立つかもしれません。

私自身の失敗談も踏まえて、選手にサッカーノートなどをつけさせるとき(指導対象者に日誌などを書かせるとき)、何をどの段階でやらせると上手くいきやすいかということも説明していきます。

さて、管理オタクである私はサラリーマンを辞めた約12年前から今日まで、様々な管理ツールを使ってきました。
ネットから無料で拾える年間計画表といった類のものから書籍についていたセルフプロデュースシート、またオンラインセミナーで学んだ都度目標シートなど、本当に数多くのものを試してきました。

それだけに飽き足らず、習慣形成や脳の仕組みに関して勉強すべく、何冊もの本を読んできました。
今現在私が使っている自己管理ツールは紙のものもあればタブレットで管理しているものなど数種類ありますが、 (もちろんそれまでに試してきたツールのエッセンスがふんだんに詰まっているものの) 全てオリジナルのもので、それ自体も数年前までは四半期ごとに見直して変更していました。
マイナーチェンジはあるものの、今では大体“これ”といったものに落ち着いています。

ところでそもそもなぜ自己管理が必要なのでしょうか。

私は以前、サラリーマンをしていましたが、そのころは出社時間や業務内容も大まかには決められていたので、自分で自分の時間の使い方を決めずとも特に苦労はしませんでした。
自分で何かを決めて自分で何かを生み出しているわけではない、言ってみれば売れる仕組みを既に作り上げた会社のアウトラインに従って業務を遂行していただけでした。

リーダーや支部長クラスの人材に経営者の考え方を持たせることがこの会社の風土にありましたが、例えば私が一から一人で立ち上げた支部での業務内容は以下のようなものでした。

データを集め、新支部立ち上げの場所を決める
その場所に視察に行き、営業戦略に必要な資料を役所で手に入れる。
その資料を基に事務所を構える場所と寮になるアパートを決める。
それらの賃貸契約を交わす。
求人広告を出し、面接から採用までの人事活動をする。
等々。

そして実際にそこに転勤する人材を送り、あるいは私自身が転勤をし、そこでの営業活動が始まるわけですが、最初の視察に赴くための出張費も、まだ立ち上がっていないその支部の経費から支出される、つまり赤字からスタートすることを会社は強く意識させていたので、移動は新幹線にするか飛行機にするか、そして泊まる宿はどこにするか、などを算段しながら決めていました。
もちろんそれらの手配も自分でします。

こういった組織風土もあり、そして転勤して上司が誰もいなくなった環境で一から営業戦略を練って遂行していくという生活だったこともあり、私は自由度の高い、自分で自分のやることを決めて仕事している感覚に陥りましたが、実際には既に会社の中で前例があり、パターンがあり、成功までの輪郭があるうえでの作業でした。

「営業」と聞くと、そこには話術のようなセンスや才能など個人の力量に頼るところが大きく、その手法も個人間で違いが出やすい、そして自由度の高いジャンルの仕事内容に感じられますが(実際にその部分も多々ありますが)、通常の営業はおろか、まあまあの頻度で訪れる苦情対応や役所交渉ですら、それらの手法にはマニュアルがあるか、無くても似たような前例がありました。

つまり私は(私のみならずですが)誰かが既に作り上げたもの、あるいは経験したことを真似することができていたというわけです。

私はそれが悪いと言っているわけでも、優秀でないと言っているわけでもありません。
社長にでもならない限り組織で働くというのはこういうものですし、集合知や経験を活かすためにはこうあるべきだと思っています。

ここで言いたいのは、会社組織にいる以上、大まかであろうと会社から決められた時間割の中で決められたタスクをすることが義務になり、それを「決められてしまっている」不自由さと受け止めることも、「決めてもらっている」便利さと受け取ることもできるということです。

もう少し詳しく説明すると、出社時間も退社時間も業務タスクもほとんど決められている会社の就業においても、その仕事の効率、生産性を上げようと努力、工夫する人がいます。
あるいは休み時間や移動時間を利用して何かの学習に、自分でスケジューリングをして取り組んでいる人もいます。

一方でコンサルタントやコーチと呼ばれる業種の人に一部(あるいは大部分)の業務のチェック(監視、管理)をお願いする有効性も広く知られています。
広義で言えばライザップもこれに似たものになりますし、そもそも塾やスポーツクラブ、部活動に至るまで、全ての習い事の活動は、有料無料問わずこの要素を持っています。

この比較の本質は、矛盾も含めて、他人に管理されることが好きな人たち、あるいは他人に監視されないと頑張れない人たちがある一定の割合でいるということです。
そしてそれは「この人は管理され型、あの人は自分で型」の二元論で割り切れるものでなく、同一人物の中に二つの要素があります。

だからこそフリーランスの方や組織のトップのように自由裁量で決められることが多い人ほど、自分を強制的に頑張らせる仕組みを持っていて、その一つがコンサルタントとの契約などに繋がっているのでしょう。

ここでは話を分かりやすくするためにあえて「他人に管理される方が好き」な人と「自分で管理する方が好き」な人の二つに分けて話を進めますが、これはニアリーイコールで「指示された作業をこなすのが好き」なタイプと「自分で考えて創造することが好き」なタイプの比較とも言えます。

そして実は社会全体から見たこの「作業タイプ」の割合というのが非常に大きく、これを「創造タイプ」の人は理解できません。
自分が「創造タイプ」なゆえにこの指示待ちが好きな人たちの価値観を理解できないということです。

そして困ったことに指導者や教育者の方は能動的で積極的な「自分で管理型」つまり「創造タイプ」が多いのです。

冒頭で断りを入れておきながらここまで読み進めてくださっているあなたもおそらく「創造タイプ」でしょう。

問題は(もちろん人によってあなた自身に当てはまる可能性もありますが)教える対象となる人の性質として

①そもそも自由な時間に自己成長なんか求めていない。仕事はやりがいや自己表現ではなくただのノルマとして捉えていてそれ以外の時間は娯楽にしか費やさない。

②成長したいという気持ちはあるが、怠け癖があるので自分では自分を律することができない。努力がおろそかになる

③成長したいし自分は結構ストイックに頑張れるタイプだ。しかし自己管理のために「書く/記録する」ツールは使っていない。そして臨んだ結果を得られていない。

④成長したいし自分は結構ストイックに頑張れるタイプだ。そして自己管理のために「書く/記録する」ツールを使っている。しかし臨んだ結果を得られていない。

というタイプの人たちがいるということです。

教える対象が一人であった場合、①に対しての自己管理のアドバイスは大きなお世話です。これは後述しますが「目標ややりがいがあることは良いこと」と人に押し付けるのは少し乱暴です。
その人の価値観を尊重しましょう。

②に関してはツールそのものにこだわるよりも監視、管理してくれる人と契約をするか、あるいは同じようなタイプの人を探してお互いを監視、管理しあえる関係、仕組みを作る方がベターです。そしてその後に③や④のような状態になってしまったとき、その対処をしましょう。

③と④のタイプに関しては細かく後述するのでここでは一旦置いておいて、問題は上記のように成長意欲や努力量に差がある個人の集団をまとめて観なくてはいけないということです。

つまり多くの団体スポーツの指導者の置かれている状況に当たります。

もちろん入団に際してセレクションがあったりクラブ理念の説明があったり、選手全体の「熱」や価値観をそろえることに努力している組織が多いこととは思いますが、とは言っても個人差はあります。
入団説明会での指導者の熱弁を、校長先生の集会でのつまらないお話くらいに聞き流しているケースも大いにあります。(指導者の話の下手さに問題があることもあります)

個人コーチのように一人ひとりとコミュニケーションをとる時間が作れて、なおかつプレーさせる機会と場所を提供できるのであればいいでしょうが、ほとんど全ての指導者と選手にとってそのような条件に当てはまることはなく、例えば全国大会上位を狙っているスポーツチームに間違って「暇だから汗を流したくて」くらいの気持ちで入ってこられても困ってしまうということです。

これはちょっと大げさな例でしたが、自己の成長やチームの成績向上を求め努力している選手たちの中に、惰性で部活に参加しているだけに見える選手が混じっていることはないでしょうか。

これらの選手の熱意を上げるには、あるいはもともと熱意のある選手をさらにモチベートするためにはどうしたらいいか、ということをひも解くのに、まずは目標設定のし方から考える必要があります。

(つづく)

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