プレッシングとリトリート(後退)の取り扱い方①(全7回)

 

 

“強い”チームと戦うとき、そうでないチームからよく聞かれる言葉に「自分たちのサッカーができない」というものがあります。

 

“強い”チームとはよく勝利するチームのことであり、その要因には選手たちの個人スキルが高かったり、スタッフの分析能力、戦術採択能力、それを落とし込む指導力が高いことなどが挙げられます。

 

“強い”チームにとっても勝利を優先するときに、自分たちの平均的なプレースタイルに固執するより相手の長所を消す戦い方をする方が効率的なことがありますが、よほど指揮官の能力が低くない限り自チームの選手の能力が相手チームのそれより高い場合、たいていは“自分たちのサッカー”がそのまま“相手の長所を消すサッカー”になります。

 

そしてこの強くない方のチームが言う「自分たちのサッカーができない」に関しては「ポゼッションフットボールができない」、なぜなら相手の高い守備能力、強いプレッシングに選手たちが臆してしまってボールをキープできないから、という文脈で語られることがほとんどです。

 

自分たちの「引いて守ってカウンター」サッカーができない、ということを意味しているものはあまり聞いたことがありません。

 

という一定の割合で存在するサッカー関係者の態度からも分かるように、多くのサッカー関係者、のみならずサッカーファンにとっても、ポゼッションというものは数ある評価基準の中でも(一時期よりはだいぶ落ち着きを見せているものの)特に正義の象徴のように扱われがちです。

 

がしかし、強いチームはポゼッションフットボールができて弱いチームはカウンターしかできない、という考えはある意味合いにおいてのみ正解であるものの、「ある意味合い」という言葉を使っているところからも推測できるとおり別の意味合いにおいては正解ではありません。

 

ポゼッションフットボールとプレッシングは「基本」切っても切れない関係ですが、例えばこの守備戦術に関しても一概に“強い”からプレッシング(図1)、“弱い”からリトリート(図2)とカテゴライズすることはできません。

 

図1

 

 

図2

 

守備から考察したポゼッションフットボールへの有名な経緯に「守備が強くないからできるだけ守備の時間を減らしたい。というわけで出来るだけボールを持っている時間を長くしよう」というものがあります。

 

なるほど、守備が弱い、つまり弱いチームがポゼッションフットボールを好むのか、とここでまず一つ「強いからプレッシング、弱いからリトリート」の構図が崩れます。

 

崩しといてもう一度かき混ぜますが、この「守備が弱い」にも考察が必要です。

この「守備が強くないからできるだけ守備の時間を減らしたい」はリトリートして自陣、特にディフェンシブサードで守ることに優れていないことを意味している可能性が高いのであって、プレッシングスタイルの守備が弱いことを意味していません。

当たり前ですが、プレッシングが苦手ならプレッシングフットボールを選択しません。

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