図6-2
図6-2は「攻撃チームの2CB+DMのボール回しにより、守備チームのCF2が横からしかプレスをかけられていない」状況ではなく、CF2がファーストパスから「意図して内側を切り、縦にCBを走らせている」状況を表しています。
守備チームは縦をさらしているので、CBにとっては見える味方選手の数はプレッシャーが不十分の時に比べてさほど変わらないように思えます。
しかしながらプレッシャーから逃げるため、CBのドリブルのスピードが上がってしまいます。
もっと言うと、個人戦術の理解不足により「前が空いたから」との理由で、プレッシャーが無くてもその後のプラン無しでやみくもにスピードを上げるCBもいます。
スピードを上げることのデメリットは何でしょう。
早くボールを前に進ませることは良いことのように思えます。
答えはいくつかありますが、その一つは「出来るキックの種類が減る」というものです。
例えばトップスピードでドリブルをしてしまった場合、角度の狭いエリア(ドリブルでボールが向かっている方向、及びそれに近い方向:黄色のエリア)の選手たちへは頭を超すような緩いボールを蹴りづらくなります。
守備チームからしたら一定の位置までラインを下げて、CF2のプレスがかかり切ったら、担当“エリア”ではなく、担当“者”へのプレスへの準備が出来ます。
つまり守備側からしたら“裏”ではなく“前”に狙いを絞りやすくなるということです。
この、相手の「こっちサイドにボールを送らせたい」という意図、思惑(私は「ベクトル」や「エネルギー」、「重心」、「体重」という言葉を選手達によく使います。私の同僚は「矢印」という言葉を使っていました。いい共通言語だと思います)をその都度考えながらプレーすることはサッカー選手に求められる必須のスキルでありますが、脳に十分な酸素が行き届かない状況で活動している選手達は、指導者が外側から観て感じているより遥かに高い頻度で、このことに対する集中力を切らします。
あとは頭を超えるボールの供給先と言ったら、インに引っ掛けられる対角(水色のエリア)くらいになりますが、そもそも幾分でもプレッシャーを受けながらトップスピードで走った状態で対角に正確なボールを蹴れるくらいCBの足元の技術が高ければ、狭いDFユニット内で3(4)対2をやる必要がなく、前に走らされる頻度も減ります。
つまり逆に言えば、この戦術を採択するチームのCBはある一定のスピードを超えながらのロングパスは、角度にかかわらず選択肢にない可能性が高いということです。
ちなみにここまでこのCBが左利きである前提で話していますが、これが右利きだった場合さらにプレーの選択肢は減ります。
※「専門家のサッカー解説書 GK、DFからのプレー ①」より抜粋