分かりやすいものだとそのまま左CMがついて行くというのもありますが(図14)、他にはディフェンスライン全員がスライドをして右WMを下ろすといったもの(図15)やあるいは右CBまでがスライドをして右CB‐右FB間に右CMが下りるといったものなどもあります。(図16)
図14
図15
図16
このときの両チームの優位性は先ほどのものとは異なります。
分かりやすく図15のシステムを基に左CBが右AMの対応をしている仮定で話を進めましょう。
この状況下では部分的に3v2や2v1を作れているとは言えません。(図17)
ボールの移動中にスライドしてセットを終えた右CBにCFのボールサイドを取られていることよりも右AMが中を向けていないという条件がポイントです。
図17
内から外へと移動してきた右AMのベクトルは当然外に向かっているので、右足のインサイドで鋭角に切り返して左CBを内側にかわすことも難しければ、背中を向けた状態から縦に抜けてクロスを上げるのも難しい状況です。
よって仮に右CBがCFのボールサイドをこの時点ではまだ取れていなくてもこの状況下でのCFの直接の関わりは難しくなります。
それでは今度はエリアを図18のように切り取ってみましょう。
赤枠の中に3v3が出来上がりました。
図18
ここでのポイントは2つあり、ひとつは至極当たり前のことですが左CBが右AMの中への侵入を防いでいる以上、右AM、右WM、右FBで形成する三角形の中に左CB自身は入れないということと、そしてもうひとつが左FBと左WMの「人(マークを担当する相手選手)」以外に担当している役割及び彼らの見えている方向です。
まずは左CBに関してですが、場面の切り取り方を先ほどの赤枠のエリアから青枠のエリアに変更した図19を観てください。
図19
左CBがエリアの外に出されて右AMが半分だけ中に入っている状態です。2.5v2の状態です。
右AMを全部エリア内に入れて左CBを半分だけ中に入れて3v2.5という考えでもどちらでもいいのですが、私はこの「0.5」という概念を大事にしています。
特にビルドアップの指導時にこれを重視していて、相手のプレスを背中で受けている状態の選手との関わりやその選手のできるプレーを理解させるときにこの「0.5」という概念が役に立ちます。
例えば図20の状況でCBがボールのリリース先にAMを見つけたときに、そのAMがきちんと相手をかわして前を向くことがベストですが、それができなくても条件付きで味方の数的不利や同数のエリアを助けることができるというものです。
図20
その条件というのは「速いボールだったらワンタッチしかできない」であったり「スピードの出ていないボールでも数秒しかボールをキープできない」であったりです。
そしてこの条件付きならプレーに関われる状況というのは、サッカーに攻守の方向が存在する以上どこでも発生します。
指導者でなくてもすっかりサッカーファンに周知された感のある「大型FWなどの前線でのポストプレー」もこれに該当します。
話をフランクの場面に戻しましょう。
図19の状態で右AMが「条件付き」で担えるここでの役割とは何でしょう。
ここで2つ目のポイント、「左FBと左WMの「人(担当マークの選手)」以外に担当している役割及び彼らの見えている方向」が関係します。