FBによるCBの助け方

 

図6-8

 

さて、WMFBへのパスコースを(場合によってはわざと)空けているということを知ったところで図6-8を見てみましょう。

 

この図が表しているのはその現象の性格を逆手に取ったものになります。

端的に言うと、図6-4でCBがターンして内側を覗いた役割をFBにしてもらうというものです。

 

守備チームのベクトルは(守備チーム側から見て)右に向いていました。

ハメどころは左FBでした。

その相手の意図したハメどころにボールを送ることは状況が悪化するように思えます。(実際、残念ながらそうなることもしばしばあります。)

 

ただ忘れてはいけないのは、ボールホルダーの左CBが見ることができる4選手(左WG、CF、左FB、左AM)の中で、グラウンダーのボールを受けることができ、なおかつ最初からベクトルの逆方向を向いているのが、唯一この左FBだということです。

 

左CBのドリブルにより、右WMは背中でスクリーンをしている左WGに対するPin downが一瞬起こります。

その間に、左FBが少し降りるように距離を空ければ相手のプレスを受けずにボールをもらうことができ、なおかつ中を見ることができます。

 

図では、FBがギリギリまで高い位置を取り、WMの重心を後ろにするように努力して、リリースとほぼ同じタイミングで降りてきているという大げさな状況にしています。

この状況でもFBがファーストタッチでシューズ一足分でもWMのプレスをずらしながら内側を覗くことが出来たら、MF-FWユニット間にボールを送ることが出来ます。

図の場合は右CBです。

CF1がダウンして右CBをケアすればDMGKへのパスを選択できます。

 

これを基本システムとして採択するには、この左FBが右足でもある程度きちんとパスが出来ることが必須条件になってきます。

それこそチーム事情により右利きの選手を左FBに置かざるを得ないチームにとっては、この点に関してはそれが利点に変わります。

 

ちなみに、セーフティーにGK右CBをあまり動かさず、MF-FWユニット間右FBを入れることも出来ますが、そこから右サイドへ展開したい場合、一人少なくなる分、そのエリアにパワーを持たせることが出来ません。(黄色の動線)

 

これもチームデベロップメントの段階やゲームプランをも踏まえて検討しなくてはいけない案件です。

 

ここまでで、守備チームにとってワイドエリアにプレッシャーをかける選手(図だと右WM)は動き出しが早いとゲートにパスを通されるし、遅すぎても反対サイドにボールを送られてしまう可能性があるということが分かりました。

これはもちろん個人のみの責任ではなく、連動する全ての選手が関わります。

 

一方、攻撃チームからしたら相手のハメどころにボールを出して状況が悪化することがしばしばある、とも述べました。

これもオフザボールの動きで相手選手を操作するところも含めて、複数の選手が関わります。

 

このポイントでのポジショニングの攻防は攻守ともにチームプレーの完成度、選手の理解力の良し悪しが実は色濃く表れるところであり、誤解を恐れずに言えばどちらのチームが試合の主導権を握るか、までをも占える要素であります。

 

単純に選手の身体能力やテクニックとは別に、指導者の指導能力もテストされる部分ではないでしょうか。

 

※「専門家のサッカー解説書 GK、DFからのプレー ①」より抜粋

 

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