図7
守備連動のトリガー(きっかけ/起こり/スイッチ)になりやすいのはFBにボールが入ったときです。
これは、ファーストプレッシャー役になるWM(ワイドミッドフィールダー:サイドハーフ)の見える位置(近い位置)にいるFBがプレッシングの餌食になりやすいということです。
というわけでハメどころを上に持ち上げてしまおう(≒ファーストプレスになる左WMのポジションを後ろに潰してしまおう)というのが図7におけるこの右FBの狙いですが、そもそものFBのビルドアップにおける役割とはなんでしょうか。
求められる基本的なFBのプレーも、ここで一旦簡単に整理しておきましょう。
図8
内側に畳むプレーは後ほど紹介するとして、まず基本中の基本としてFBのプレーの最優先事項に、ビルドアップのファーストユニット(主にGK、CB+チームによってはMF、この図の場合は両DM)から送られてきたボールを①WGの裏に送る、②WGの足元につけるというものがあります。(図8)
①、②は優先順位順です。
身体の角度のつくり方、視野の確保、ファーストタッチのスキル、リリースのスキル、時にダイレクトプレーのスキル等、ここでFBに求められることは多いですが、これらの欠如のせいでWMからプレッシャーを受けている状態でのそのプレーができないFBは一定の割合でいます。
それではこのFBをDMと同じ高さまで上げずにCBの高さに並べたらどうか、と考えたいところですが、そもそもDMの高さに上げている経緯に、CBと同じ高さでパスを受けるとよりチーム全体が後ろ重心になり相手の前がかりなプレス餌食になるから(なったから)といった事情が考えられます。(図9)
図9
これはFBのスキルだけでなく、パートナーとなるCBやDMのスキルやチーム/グループ戦術の不手際が原因であることも考えられます。
反対にこういった経緯もなしに何となく「今どきのサッカーってこんな感じだから」というような思考停止状態でFBを一列前(DMと同じ高さ)に上げているだけなら、きちんとFBをディフェンスラインまで下ろして相手の出方を確認しなくてはいけません。
そして相手の「かけ得」(細かい状況判断なしに「前からプレッシャーをかければ何とかなる」というオールラウンドプレスと実際にボールを奪いきるという結果)にならないためのシステムも自チームに用いることができるか試してみる必要もあります。
左WMが大きく前にポジショニングしているせいで穴が開いたMFエリアの活用などです。(図10)
図10
これが上手くできない、よってFBをDMの高さまで上げてみよう、しかしそれも上手くいかない、となって初めて、FBをさらに上げることで、ビルドアップの排出元から外して排出口に設定する、とするのが本来の(あくまで苦手のプレーをさせないということだけに特化した)手順ですが、何度も述べているとおり、先ほどのDMのセンターでのプレー同様、特に育成世代の日々の練習では、あるべき姿を求めてバランスのいい練習を心掛けたいものです。
さて、FB主導でFBを高く上げてFB-CB間にDMを入れる経緯、反対に言えばビルドアップ時のパスの排出元になることが苦手なFBの逃がし方(活かし方)は分かりました。
しかしここで今一度DMをここにポジショニングさせる効果について、いくつかの状況を検証する必要があります。