「選手の特徴」の活用法⑩(全10回)

 

 

それでは最後になりましたが、Ⓓの「細かいステップと多いタッチ数で相手をかわすことが得意な選手」の活かし方を説明したいと思います。

 

この手のタイプはざっくり言うと密集地でのドリブルが得意なタイプです。

またⒸのタイプとは反対に、相手との間合いがある状態でドリブルをスタートすることを得意としない、つまりその間合いを調節することに優れていないケースもあります。

 

これと似ていて、相手に(背中などで)触れている状態でショートパスを受ける分にはプレッシャーを感じずにそつなくプレーすることができる一方、長い縦のパスを受けるときに自分をマークしている守備選手自分から体を離したところからプレスに来ると、相手の位置をつかめていなかったせいで恐怖心を感じて慌ててしまう選手もいます。

 

という理由からもこの手の選手は密集地でプレーさせることにはうってつけで、ポジションで言うと、AM偽9番タイプ(MFゲートMFのお腹側に移動してプレーに関わるタイプ)のCFが向いています。(図32)

 

図32

 

また基本システムとして、フランク(ワイドエリア)をFBが取りに行くこととセットで、WG中盤のボール前進のサポートのためにセンターに移動し、可能ならば狭いエリアでのパス交換や個人技での突破を図る、としているなら、このWGポジションもⒹのタイプの選手には向いています。(図33)

 

図33

 

ここで選手の特徴を活かしたコンバートを考えるとき

「いや、『大きなステップで少ないタッチ』のザ・ワイドプレーヤータイプのうちのWGにこのエリアでのプレーは無理だろ」

と思うかもしれませんが、現代のサッカー界ではⒸかⒹかどちらかの能力が、というよりⒸもⒹもどちらの能力もこのポジション(WG/WM)には求められています。

 

ということは観方を変えれば、あなたのチームのWGも実は両方の能力を兼ね備えている選手である可能性があるということです。

 

WGからCFへのコンバートで有名な成功に、クラブ歴代最多得点数を誇るメルテンスなどの例があります。

他にも、代表ではWGをしているがクラブではCFをしている例など多くあります。

 

デブルイネに関して言えば、代表では深い位置のMFでプレーしながらクラブではAM、WGまでこなします。

同じ代表内で偽CFをすることもあります。

 

自分のチームの選手の精査は丁寧にしたいものです。

 

 

さて、ここまで選手の特徴の活用法について解説してきましたが、あなたにとって新しく知ったことや、聞いたことはあったけど頭の中で整理していなかったことなどはあったでしょうか。

 

これは選手を指導するときもそうなのですが、知らなかったことを知っている状態や納得できている状態にすることより、それらの状態をやっている状態やできている状態にすることの方がはるかに難しいものです。

習得の5段階というやつですね。

 

指導者の方はもちろんのこと、分析家や観戦者の方もこれらの知識を活用していただけたら幸いです。

 

「あの選手、あんなに足が速いのに何でWGはやらないんだろう」とか「なんであのチーム、偽FBをやめたんだろう」とか「なんでこのチームは左右非対称なんだろう」とかいったポイントを見つけながら試合を観ると、サッカー観戦が一層楽しくなると思います。

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