ボールサイド、ゴールサイド

 

図2-9

基本フォーメーションのところでも簡潔に伝えましたが、ボールに近い方がボールサイド、ゴールに近い方がゴールサイドという定義がFAにはあります。

が、正直この説明だけでは(少なくとも私にとっては)不十分で、もう少し細かい説明が必要です。

パスが(多少の角度のズレはあっても縦、中など)ゴール方向に向かう時、パスを受ける選手がそのまま前に進もうとする側がボールサイド、反転してゴールに向かう側がゴールサイドになります。(図2-9)

Aにとっては縦がボールサイド(BS)、中がゴールサイド(GS)になります。

ボールの受け手に対して厳しいプレッシャーをかけ、隙あらばインターセプトを狙いたいわけですが、万が一そのチャレンジに失敗して相手を逃がしてしまったとき、そのプレスの方向がボールサイドから来たかゴールサイドから来たかでその後の守備連動に大きく影響を及ぼします。

相手の利き足により多少のアレンジはあるものの「一定のレベルに達した」リーグで戦っているチームを指導するとき、ボールサイドだけはどんなことがあっても突破させないようにするのが原則です。つまり担当選手へのプレスはボールサイドからかける必要があるということです。

これはBのようにゴールへの角度があまり無いときでも同様で、その理由は単純明快です。

一つは角度の無いところからでもゴール側に切れ込んでゴールを狙う能力が「一定のレベルに達した」選手にはあるからです。

つまり逆に言えば「一定のレベル」の基準はここになります。

そして仮にBにとって直接のシュートが難しくても内側のDFたちGKの間に早いボールを送ることができてしまいます。しかもほとんどのケースで守備側にとってはボールウォッチャーになってしまう時間(瞬間)が出来ます。

というわけでボールサイドをしっかりと切ることは分かったと思いますが、反転されて内側に侵入される場合はどうするのかというと、図の場合だとA’Aに対しての本来のポジショニング、ボールサイドを取っていれば(白抜きのA’)、自然にBのゴールサイドをケアできることになります。

つまり一つボール側の選手のゴールサイドを取りながら担当選手のボールサイドを取る、というパターンが守備側のポジショニングの原則です。

さて「パスがゴール方向に向かう場合」と先に述べましたが、Cの選手のように内側から外へと送られるボールに関してはボールサイドもゴールサイドもありません。当たり前ですが外側からインターセプトを狙うことなどあり得ません。

図2-10

図2-10のように開いたCBなどDFユニットから中盤(D)へパスが送られる時も、狙えるのであればあるべき姿としてはボールサイドからインターセプトを狙います(白抜きのD’)。これは図2-6~2-8でもそう示してあります。

内側(ゴールサイド)に反転されてもMFユニット内の次の選手(E’)が待ち構えています。これが縦に突破された場合、DFが一人引き出されるか、それが出来ずディレイ(ボールホルダーたちのスピードを弱めさせて他の選手の戻りを待つこと)のためにDFラインを下げさせられてしまいます。

とはいえ中盤でのボールサイドポジショニングはあくまで「あるべき姿」、「理想論」で、そもそもボールが真ん中(図だとGKの位置)にある時にはMFは全員相手選手のゴールサイドにいて、そこからスタートします。

DFラインでのパス回しからMFに直接ボールが配給されるとき、MF(D’)ボールの受け手(D)のボールサイドを取れないことはしょっちゅうあります。

例えばいったんワイドエリア(FB)にボールを配給させた後のバックパスからの図のような展開ならまだしも、CBGK間でボールを回した後の直接のパスだとまず無理です。当然Dも動くからです。

仮にDがほとんど動かないポジショニングをしていればボールサイドを取れることもあるでしょうが、CBがキャンセルしてGKにボールを戻すようなことが続けば、MFのスタミナがいくらあっても足りません。

というわけで実際にはCBからのパスに関しては相手選手の背後を取って縦には行かせないポジショニングを取ればいいという考えが一般的です。

図2-11

そしてFWの効果的なスクリーニングなどによってワイドを経由させて、きちんとスライドする時間を作ってもらったとき、そこから出る横パスに関してはインターセプトを狙いに、あるいはそれが無理でも反転させてE’と挟めるようにきちんとボールサイドを取ります。(図2-11)

図2-12

ちなみに図2-12のようにFにとってのボールサイドとゴールサイドはどちら側になるでしょう。

これも理論上は矢印の方がともにボールサイドであり、ゴールサイドになります。

図2-9で説明したBのボールサイドと比べると、Fにとっての外側の反転は、ゴールから見た角度的にはこちらの方がより危険があるように見えますが、実際にはPasserからパスが入る角度や強度を考えると反転にはほんのコンマ数秒ながら余分な時間もかかるし、Fには高い個人スキルも求められるので、F’はボールの移動とともにFへの距離を詰め、万が一外側に反転された場合はそのままワイドに追いやるようにプレスをかけるだけです。

ところがたまに外反転でゴールを決められるスーパーな選手がいて、その場合MF(図だとG’)にスクリーンさせるかその選手(F)の外側のポジションを取らせるか(スペースかか)の約束事をチームで決めたいところですが、こういった問題には選手の持久力や大外にいるFBのポジションなど複合的な要素を考慮して対処しなくてはいけません。

テーマから大きく外れてしまうのでここではボールサイドとゴールサイドの定義とそこに至る基礎アイディアの説明に留めておきます。

 

※「専門家のサッカー解説書 クロスに対する守備 ①」より抜粋

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