マンツーマンでは対応できないこと

 

図11-8

 

ここまで「最も分の悪い条件」ということで、中の人数がマイナス1の状況での守備対応を説明してきました。

 

しかし実際には右WGに縦突破を許したとしても「元々の状況がプラス1なので、最初のカバーに左CB一人取られても中は同数」ということも当然あります。

この場合ならマンツーマンディフェンスを選択した方がいいのでしょうか。

 

これはチーム、クラブの哲学が反映されやすい部分でもありますが、戦うリーグのレベルが上がるほどマンツーマンは機能しなくなります。

理由は至極単純で、相手が先に動き出す以上リアクション側はいつもそのアクションに後れを取るからです。

しかもこれにボールを見なくてはいけない、もっと言えばボールウォッチャーにならざるを得ない、という条件が加わります。

 

これはただ単純に距離を確保して前に入られなければいいという話ではありません。

図11-8はマンツーマンディフェンス相手に攻撃側の選手が単独で「スペースを作る・スペースを使う」様子を表しています。

 

は前への侵入に反応したDFから斜め後ろに遠ざかるようにゴールへのシュートコースを確保しています。

 

はファーをケアさせた後のニア取りです。

 

はニアを警戒させた後のファーです。

 

図ではわかりやすく鋭角にターンを切っていますが、実際は一歩重心をかけるだけでもつられます。

 

ボールウォッチャーにならざるを得ない瞬間があるからこそ最初からもっと近づいて相手の体を触っておきたい(相手の動きを視覚ではなく触覚で認識したい)という選手もいますが、リアクションである以上結果は同じになります。

 

つまり中が同数であっても場所を守り(斜めラインを引き)、引いたせいでゴールから遠いところにパスを通させてしまう、という一点のみをあきらめる代わりにニアもファーも横にずれてのシュートコース確保も極力潰す、逆に言えばあきらめたプルバックへと相手を誘導し、パスが出た瞬間そこへの素早い対処(シュートブロック)ができるようにポジションにおいてもマインド面においてもしっかりと準備をする、ということが求められます。

 

これは「危ない時は『』ではなく『場所』」という大前提の基礎思考があっての選択であり、さらには縦を突破されて中の選手たちがボールウォッチャーにならざるを得ない状況を作られているという時点で相手にとってはゴールを奪って当たり前という状況下、GKDFの間に速いボールを送られるよりはプルバックを出させてほんの1秒程度でもMFが戻る時間を稼ぐ、という最後の水際の大事な抵抗でもあります。

 

※「専門家のサッカー解説書 クロスに対する守備 ②」より抜粋

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