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せっかくなのでここでもう少し具体例を出しておきましょう。
例えば、右WG自身がリターンをもらうのもよく見る光景です。(図8-20)
この右WGは、フリーランの方向そのままワイドに押しやられてしまうようなヤワであってはいけません。オフサイドラインでの駆け引きに勝ち、すぐに内側に振り向いてゴールに向かう、走力と敏捷性などを含めた能力が求められます。
図8-20
と同時に、フランクに広がることなく中央裏でボールを受ける選択とその遂行能力は出し手にも受け手にも常に求められます。(図8-21)
図8-21
角の取り方に関しては、内側に畳んだFB(詳しくはこちら)に連動するように、この最ワイドの2列目の選手が、下りてきたWGになっている場合も同様です。
図8-22は4-1-2-3のフォーメーションです。
FBが畳んだおかげでホットラインができがちなCB-WG間のパスをWGが下りて受け、WGが下りたおかげで出来た角のスペースをAMが利用するのはおろか、畳んでいたFBがそのままアンダーラップで利用するのもここ10年で珍しくない光景になってきました。(図8-22)
図8-22
またこちらは偽4-1-2-3の実質3-5-2、あるいは左右非対称の3-4-3と呼べるフォーメーションでの例ですが、こちらもホットラインができやすいCBーFB間でパスを出し、そのまま最前線までCBが向かう、なんてプレーを当たり前のように見せるチームもヨーロッパのリーグでは出てきています。(図8-23)
図8-23
ここまで角を削る選手配置からのフロー(人とボールの流れ)を解説しましたが、一方、フォーメーション、システム採択の話で言えば、角にあらかじめ人を置く戦術も馬鹿にはできません。
プロの試合にヒントをもらえば、やはりリーグ中位や下位のチーム、特にGKやDFのフィード能力がそれほど高いわけでもなければMFのレシーブ能力が優れているわけでもないチームが上位チームのポゼッションフットボール、プレッシングフットボールに対抗するとき、自分たちのポゼッション率は一切捨てて、ボールを裏抜けさせる、できればGKとDFの間に横からボールを入れる、その絶対数を少しでも増やそうと、各フランクに2人ずつ置いてでも角にはあらかじめ選手を配置することがよくあります。(図8-24)
観ていて面白いかは別ですが、相手プレスに対する自分たちの屈しやすさを受け入れて、ビルドアップのこだわりを捨てた潔さがあります。
もちろん力関係から言って、たいていはパスの出し手がプレスを受けた状態で、孤立しているワントップないしはツートップに不正確なロングボールを蹴り、そのFWがそれを収めることができずに回収される、というのが結果としては最も多いのですが、数が少ないながらもチャンスメイクができたパターンを観てみるとダイヤモンド(もしくは順三角形)+角の排出先、という選手配置が一定の割合で出現している、というのは少し興味深い現象です。
図8-24