目標達成のツール⑦ -自己肯定感と行動の罠- (全9回)

 

 

目標達成のツール -書く理由-

目標達成のツール -目標設定のしかた-

目標達成のツール -期限とルート-

目標達成のツール -行動の仕分け-

目標達成のツール -自己分析-

目標達成のツール -セルフモチベーティング-

 

ここまでで「書く」ことによって行動の仕分けができたり、自己の傾向を明るみに出し分析しやすくなるということが分かりました。

そしてそれを元にしたセルフモチベートも書くことによって成しえるということが分かりました。

 

再三になりますが、長期計画表から日毎の日報/日誌まで、それらを書く(書き続ける)理由は、言わずもがな、目標を達成するためです。

が、これをもう少し細かく噛み砕いてみましょう。

 

特に日報/日誌(など、日課になっているもの)を書き続けることによって、つまり習慣によって何を手に入れようとしているのか。

これはそのフォーマットに依るところも大きいですが、まず考えられるものに自律性があります。

問題抽出と解決の能力も考えられます。

他に思いつくものではセルフプロデュースの能力や成功のための鍵を発見する能力であったり、予測力や改善力、または準備の能力などがあります。

 

が、私がこれらのどれよりも手に入れたい(指導対象者に手に入れてほしい)と思っているものは自己肯定感です。

あるいは上記に羅列したそれぞれの能力を得ることにより自動的に自己肯定感を得ようとしているとも言えます。

 

充実感や充足感と置き換えてもいいかもしれません。

目標達成のために「やるべきことをやっている」感、「がんばっている」感とも置き換えられます。

 

それではその自己肯定感を上げるためには日報/日誌に何を書くべきか。

ここも、繰り返しになりますが、個人差が出るところです。

実際の行動(努力)自体ももちろんですが、それらの何をどのように記し確認するかによって自己に対する働きかけが変わります。

 

日誌に記す項目として一般的には、以前の記事で触れたとおり、新しい一日が始まるまで(できれば前日まで)に記しておく一日の予定や、実際の行動記録などがあります。

 

気づきの能力を上げたければ「今日、ためになったこと」のような欄や、問題発見と解決力を求めているなら「今日上手くいかなかったこと」や「もう一度今日という日を生きることができるならどう改善するか」などの欄を設置することもできます。

 

充足感を確認したければ「嬉しかったこと」、行動力を促したいなら「初めてやったこと」などを設けるのもいいでしょう。

私自身は職業柄でしょうか、「当たったこと」という項目を設けて自分の直感の分析も試みています。

 

そしてこれらの項目は多ければ多いほどいいというものでもありません。

ここが今回のシリーズで最も伝えたかったことですが「書く」ことに慣れていない人ほど「書くべきこと」を詰込みがちです。

これは計画の立て方における傾向と同じです。

 

慣れていない人は今後のタスク量を、計画を立てている/日誌を作成している今現在のテンションをベースに設定してしまうからです。

ということは本来これらは、あまりやる気が出ないときや、飽きが出はじめてからの自分のマインドをあらかじめ考慮して作成する必要があります。

 

要は日課になる日報/日誌に書く項目が増えるとそれにかかる時間が長くなり、書くという行為そのものが辛くてサボりがちになるということです。

が、短ければいいのかというと、短すぎると今度はやっつけ仕事になってしまいがちです。

個人的には日報/日誌を書くのに最低でも15分前後かかる、そしてノってきた日など長くなった時には30~40分くらいかかるものがちょうどいいと思っています。

 

が、ここで特に指導者の方、指導対象の人間がいる方に気をつけてほしいのが、日報/日誌に書く中身(内容)のみならず書く量(書くのにかかる時間)も各個人に合わせて調整やアドバイスが必要ということです。

 

私自身の経験から言うと、選手全員、強制的に同じフォーマットで書かせていたときは、やはりやっつけ仕事で提出してくる選手がいました。

 

一方、自主参加型のレクチャー形式、ミーティング形式にして、参加した選手のみに計画表の立て方からデイリーチェックシートの作成のし方までを指導したときは、その「座学会」に参加した選手が他の選手に比べて著しい割合で目標達成したものの、そもそもこういった会に自主的に参加するような人間は元から向上心や勉強意欲が高いと推測でき、放っておいても目標を達成していた可能性があります。

 

本来、指導する立場にある人間が、習慣によりその人間の性格/体質を本人の望むものに近づけたいと思う対象は「自主的には参加しない」タイプの人間の方です。(もちろん指導者の指導が無いところで個人的に学習、実践している人間は別です)

 

まずはこの「参加したくない(面倒なことはやりたくない)」人間を半強制的に「仕事」をさせる、がその「仕事量」と「内容」を本人にとって過度のストレスにならないように個別にアレンジしてあげることが有効的です。

 

例えば日誌で言うと、タイムログすら取り払って「自分をほめてあげたい出来事」や「周りに褒められたこと」のような、文字通りそれそのものが自己肯定感を上げる項目のものだけを毎日書かせたりします。

 

私自身も実際にこれをやらせたことがありますが、一定の効果が出ました。

大事なのは、欲張って最初から「せめて『今日の反省点』や『改善点』くらいも書かせようか」などと考えないことです。

まずは対象者にエンジンをかけさせることに集中させてください。

 

そしてそれをきっかけに徐々に日報/日誌に書く内容を増やしていき、最終的には一日15分程度の振り返りと改善、翌日の準備、1~2週に一回程度の振り返りと改善、次のタームの準備ができるようになるように働きかけていきましょう。

 

そしてまた、それをさぼらせない仕組みづくりもしましょう。

一番簡単なのは指導者自身が毎日チェックすることです。

 

ただし最終的に彼らになってほしい状態は「やらされ仕事をきちんとできる」ではありません。

「自己管理ができる」です。

 

チェックの頻度を少しずつ減らしたり、選手(指導対象者)どうしのペア/グループ間でチェック機能を持たせるような仕組みづくりが求められます。

 

そして選手(指導対象者)自身が、たまにサボったときの「自分で決めたことなのにやっていない」ことに対してストレスを感じるようになったら第二段階に入ります。

このストレス、イライラは目標達成のためのモチベーションになります。

 

言い換えれば、自律性や自己肯定感、自分で自分をコントロールできる喜び、充足感を手に入れた状態になっているということですが、この状態になって初めて「行動の罠」にはまっていないかを確認するステージに移るということです。

 

世の中の自己啓発系や目標達成系の書物にはほとんどここからのことのみが書かれていますが、現場では「あるべき姿」になっていない多くの人間がいます。

 

つまり「行動はできているけど目標達成に近づいていない状態をどうにかしよう」以前に「とにかくサボらないこと」を叶えなくてはいけないということです。

もちろん、もともと自分で決めて自分で行動できている人間には、ここから先のチェックのしかた、改善のしかたのアドバイスだけで十分かと思われます。

 

極論を言えば「目標を叶えられない人」とは「努力をしていない人」か「努力のし方を間違えている人」のどちらかになります。

そもそもの最終達成目標が期限に対して非現実的だった可能性ももちろんあります。

(ここら辺は「S.M.A.R.T」で自己査定してみましょう。)

 

また余財管理を2~3倍に設定して時間、お金、体力を計算していなかった可能性もあります。これも「非現実的」に繋がります。

これに関しては最初の中期タームの振り返りで、そのタームの目標設定に対して実際の達成率が何割くらいだったのかを検証できれば、以降のタームへの改善に役立てられます。

 

が、しかしここで

「いや、そもそもの計画もキツキツに詰めていてさらに遅れが出ている分のカバーもしなくちゃいけないのに、これ以上行動量は増やせないよ」

となるかもしれません。

 

前述した最終達成目標が期限に対してどう考えても非現実的なら仕方ありません、下方修正するしかありません。

 

一方で日々のタスクに対して「これくらいしかできない」という固定観念や自己セーブがないかを今一度考える必要もあります。

特に「科学的根拠」や「世間の常識」と呼ばれている類のものを元に行動内容や行動量を設定している場合は、それらに洗脳されていないか、抑え込まれていないかを考える必要があります。

 

科学的根拠の多くはただの統計、データであることを私は科学者や化学教師の話から聞かされています。(これに関しては機会があったらまた書きます)

 

また、思い込みの枠を外すことも大事ですが、仕組みそのものを変えることやアウトソーシングすることで効率化できないかを考える必要もあります。

 

特に学生のスポーツとなると、学生という立場柄お金を余財として保有するのも難しければ、スポーツという特性柄、時間を増やすことも同様にはばかられます。

 

それこそ以前の記事で書いた、日常生活の時間を鍛錬に使う習慣作りや、向上心のあるゴールキーパーの選手たちがしばしばやるように、自分の動作確認のための撮影を試合だけでなく練習からも行い、そしてそれを毎日チェックする、というものなど、今までの組織の前例になくても、あるいは自分自身の成功体験の仕組みにはなくても、遂行する価値があるものは試さなければいけません。

 

いずれにしても行動の罠にはまっていることに気づいたときのできる改善案としては「量を増やす」と「新しいことをやる」のどちらか、あるいは両方しかないわけですから。

 

(つづく)

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